前17回までは改正保険業法と金融検査について記載してきましたが
この18回からはもう少し視野を広げて
「顧客本位の業務運営」の考え方の背景や、何が代理店に求められるのかについて記述できればと考えています。
改正保険業法は2016年5月29日に施行され、2017年3月30日に「顧客本位の業務運営に関する原則」が公表されました。
しかしこの金融行政の大改革の精神は、森元金融庁長官の信念のもとに2015年9月に公表された「金融行政方針」に既に明確に表現されています。
「金融検査マニュアル」をもって、不良債権処理と自己資本比率の確保により「金融機関の健全性」を目指すことから
「顧客の資産形成」に金融行政の比重を移す考え方が書かれています。
金融機関の健全性が軽視された訳ではなく、顧客が利益を得て成長することが金融機関の本来の使命であり、
それが金融機関の健全性を向上させさらには国益をもたらすことに繋がると森元長官は考えていたのです。
1991年3月にバブルが崩壊し、多くの金融機関が破綻しその主要原因であった不良債権の完全処理を目指して、1999年7月に「金融検査マニュアル」が作成されました。
不良債権処理を進めるだけでなく、新たな不良債権を生まないように新規の貸付についても非常に厳しいチェックがされていったのです。
もしかしたら新規事業を立ち上げて成長を夢みた中小企業の経営者が、その計画をやむなく断念せざるを得なかったケースがあったかも知れません。
やがて金融検査マニュアルさえ守っていれば評価されるとの形骸化が見られ
加えて金融機関の自主性も阻害しているのではないかと考えられるようになりました。
不良債権処理が一段落し「金融検査マニュアル」の役割は終わったとの判断のもとにこれを廃止し
顧客が成長することを目指した「顧客本位の業務運営」という新たな金融行政方針が生まれたのです。
まさに金融行政の大改革であったのではないかと思います。
その流れは今も続いているだけでなく、加速し具体化されています。
この大きな改革を自分の事として受け止め、今後の経営のあり方を本気で変えていける代理店だけが
これからの競争に生き残って行くのではないかと思います。
「金融検査マニュアル」は今後廃止される予定ですが、従来の厳格な検査が無くなる訳ではありません。
2018年6月29日に金融庁が公表した「金融検査・監督の考え方と進め方」に記載されているとおり
保険業法や監督指針などに沿った対応は、「最低基準検証」として確認されますので、指摘を受ければ最低基準すらも満たしていないと判断されることになります。
次回に続く
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